特定非営利活動法人ジャパン・フィルムコミッション(JFC)は、6月20日(木)に長崎県佐世保市 (JAながさき西海させぼホール/長崎県佐世保市松浦町2-28)にて、第10回JFC アウォード授賞式を開催いたしました。
JFC アウォード授賞式は、例年 JFC 通常総会と併催で、全国各地で開催しておりますが、今年は近年、 映画『坂道のアポロン』、月9ドラマ『君が心をくれたから』、8月30日公開のアニメーション映画『きみの色』等のモデル地として注目を集める佐世保市で開催。全国のフィルムコミッションや自治体関係者など約100名が参加しました。 

今年度は、単なるロケ撮影の誘致や支援に加え、作品の制作に大きく影響するネタやロケ地の提案、更に支援作品のPRや活用など、積極的にプロデュースに携わったFCが受賞する結果となりました。 またJFCアウォード10周年を機に、FCおよび地域と作品をつなぐ重要なポジションである制作部スタッフ3名を、「優秀制作部賞」として表彰。「優秀制作部賞」は、FCと制作者のつながりが、今後ますます強固になっていくことを期待して、今年度新設された賞です。 

JFC アウォードは、全国各地で優れたロケーション資源の開発や市民と一体となった撮影支援、映像作品の活用による地域活性化に向けて日々奔走するFC等を表彰するものです。また、10 回目を迎える今回から、映画賞ではなかなか日の当たることが少ない制作部の功績を称える「優秀制作部賞」が新設されました。今や、映像撮影になくてはならない存在となったFC活動、また映画制作における縁の下の力持ち制作部の存在を多くの方に知っていただくことで、撮影への理解・協力を促進するとともに、さらなる撮影環境の向上や地域の活性化に繋がると考えております。 

第 10 回 JFC アウォード 
ノミネートされた 17団体の中から、最優秀賞1団体、優秀賞4団体、 および優秀制作部賞として3名が決定!

*複数団体連名で応募の際は、1団体としてカウント 

【最優秀賞】 滋賀ロケーションオフィス映画『翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~』 

【受賞理由】
「関西における埼玉的位置づけは滋賀県」とシナハンの時から、職員が猛アピールし、地域ネタを売り込んだ結果、滋賀県民の決め台詞「琵琶湖の水を止める」や滋賀県東近江市発祥の交通安全看板「とび出しとび太」など多数の滋賀ネタが作品 に盛り込まれたことに加え、職員提案の「滋賀県ポーズ」も採用されるなど制作にも大きく貢献した。 また、東映、埼玉県との共催によるキャストと監督の謝罪会見イベントや、ロケ地ツアー、パネル展、日本旅行とのバスツ アーの企画・開発等、県オリジナル動画の作成など企業等と連携した各種PRの取り組みを行ったことで、地域の経済効果にもつながり、滋賀ロケーションオフィスの「地域愛」が感じられたことが高評価のポイントとなった。

【受賞コメント】 
監督、キャスト、スタッフ、エキストラ、一緒にプロモーション活動をしてくれた埼玉県庁のみなさん、何よりきわどい内容の映画を寛大な心で受け入れてくれた滋賀県民のみなさまに、心よりお礼を申し上げます。この作品には、ありとあらゆる滋賀の小ネタが盛り込まれていますが、なかでも交通安全看板の「とび出しとび太」は、全国から注文が殺到するという経済効果も出ています(笑)。滋賀LOは、公務員が主体のFCということで、2~3年に一度人事異動があり、ノウハウ、 ネットワークを引き継ぐのが難しい状況ではありますが、この受賞を糧に、今後も映像の力で地域を盛り上げていきたいと 思います。

【優秀賞1】浜松フィルムコミッション、いばらきフィルムコミッション、諏訪園フィルムコミッション 映画『ゴジラ-1.0』

【受賞理由】
浜松市では、高速のサービスエリアに実物大ゴジラ足跡を設置し、劇中衣装や歴代実写ゴジラのポスター展を実施。 茨城県では、美浦村、筑西市、笠間市などでロケ再現セットや撮影風景パネル展等を開催。 岡谷市では、通常一般公開のないロケ地「旧岡谷市役所庁舎」を限定特別公開し、美術セットやキャスト衣装等を展示。 その他にも、それぞれのFCが独自でPR活動をしつつ、3地域が合同で、ロケ地・観光施設8か所を巡るスタンプラリーを実施するという合同企画を成功させた。この企画設定は、各FCの連携がうまく働いた好事例として評価された。 

【受賞コメント】
今回、3つのフィルムコミッションが県をまたいで、協力し合いながらプロモーションを行ってきたことを評価いただいたことを大変光栄に思います。今回のように、県をまたいでの1つの作品を支援することは少ないのですが、この受賞を糧に今後も撮影支援に尽力していきたいと思います。 

【優秀賞2】長崎フィルムコミッション ドラマ『君が心をくれたから』

【受賞理由】
FCが150か所以上の候補地を提案して誘致した結果、観光スポットを含む多くの場所で撮影が行われ、また50件を超えるエキストラの募集協力や、「精霊船」や「ランタンフェスティバル」など地域を代表するイベントを、企業や地域、自治体が一体となって再現し、撮影に繋げるなど、FCの苦労が伺えたが、その結果、長崎らしい「異国情緒あふれる景観」が作品に反映されたことは、FCの支援が作品のクオリティに大きく貢献している。さらに、その撮影支援が製作者を動かし、当初予定してなかった最終話のロケ誘致にも成功できたことは、大きな成果と言える。 

【受賞コメント】
ロケは昨年11月から12月まででしたが、夏の暑い時期から監督と一緒にロケハンに回らせていただき、大変貴重な経験をさせていただきました。ロケでは、ランタンフェスティバルを再現するなど、エキストラとして多くの県民の方に協力をいただき、県民一体となって盛り上げられたのではないかと思います。映像作品の力を実感する貴重な体験となりました。 

【優秀賞3】広島フィルム・コミッション 映画『ミステリと言う勿れ』

【受賞理由】
人気作品ということで、権利処理が厳しかった中、交通機関での主役キャストのアナウンスや広告ジャック、コラボポスターの作成、県内映画館でのメッセージ動画上映、キャンペーンの実施等、様々な企業や公的機関、映画館、テレビ局などと連携して、最大限にできるプロモーションを実施。FCが中心となって地元と製作側を繋げて成功させたことが大きく評価された。 

【受賞コメント】
地元企業さまや団体さまと一緒に行ったさまざまなプロモーションが、映画ヒットの一端を担えていれば幸いです。また、 映画を観て、ロケ地である広島に来てくださる方のおもてなしになれば、という思いから行ったいろいろ企画を、みなさま に評価していただけたことを大変うれしく思います。 

【優秀賞4】神戸フィルムオフィスドラマ『たとえあなたを忘れても』

【受賞理由】
ロケ地となった「旧摩耶観光ホテル(通称:マヤカン)」は、かつて「廃墟の女王」と呼ばれ所有者にとっては「お荷物」だったが、地元の人たちが整備して、廃墟で初めての国登録有形文化財となった。そこをFCが積極的にPRし、作品 を誘致・支援したことで、ドラマの舞台という別の価値が見いだされ、その使用料は建物の維持管理の収入源として、新 たなロケ地の発掘と維持に貢献したことが高評価に繋がった。また、FCの案内による特別なロケ地ツアーの開催など、 観光・集客資源として地域づくりに貢献していることも評価された。 

【受賞コメント】
はるばる佐世保まで来させていただいた甲斐がありました。このドラマの中でも非常に印象的なシーンとして、「旧摩耶観光ホテル」が登場しています。機会がありましたら、ぜひご覧ください。 

【優秀制作部賞】
大田康一氏/沖縄市KOZAフィルムオフィス推薦

【受賞理由】
いくつもの未開発のロケ地を発掘し、その物腰柔らかい人柄と丁寧な対応で、ロケを可能にすることから、FCが現場を 学ばせてもらえる制作担当であることと、安心して地域やロケ地を紹介できるというFCの信頼を得ていることが優れた制作部であるとして、選出された。

【受賞コメント】
制作部は、常にみんなが来る前から準備をし、みんなが帰ってから後片付けをする…というように、朝から朝まで仕事をしている“裏方の裏方”のような存在です。そこに光を当てていただき、こんな賞をいただけることに大変驚いていますし、感謝しています。制作陣が求める絵=理想のロケ地を見つけられるのは各地のFCのおかげですし、みなさまがいらっしゃらなければ、地方のロケは本当に成り立ちません。今後も引き続きご支援をお願いします。 

【受賞者プロフィール】
1976年沖縄県出身。沖縄県内撮影作品『宝島』(2025年予定・大友啓史監督)、『ゴールド・ボーイ』(2024年・金子 修介監督)始め、滋賀ロケーションオフィス協力の『湖の女たち』(2024年・大森立嗣監督)などを制作担当として関わる。また、制作主任としてはよっかいちフィルムコミッションの『来る』(2018年・中島哲也監督)や、高知フィルムコミッション協力の『県庁おもてなし課』(2013年・三宅喜重監督)などにも関わっている。 

河上絵利子氏/旭川地域フィルムコミッション推薦

【受賞理由】
ロケ地のイメージを、具体的にわかりやすく伝えることができ、また何度も足を運んで丁寧な対応をするなどの調整力や、ロケ地管理者や地域住民とのコミュニケーション力、代案などを提案する能力が優れており、そして何より撮影に協力した地域の経済効果や宣伝効果なども積極的に考えて地域と接していることが優れた制作部であるという評価に繋がった。

【受賞コメント】
この度は本当にありがとうございます。現場では制作の先輩にたくさん助けていただきました。これからもいろいろな地域に伺うと思いますが、制作部とともに作品の制作にご協力いただけるとうれしいです。

【受賞者プロフィール】
1988年岡山県岡山市生まれ。神戸芸術工科大学メディア表現学科映画専攻卒業後、石井岳龍監督の『シャニダールの 花』(2013年)で制作部として入りその後上京。過去に制作部としてかかわった映画作品は『青空エール』(2016年・ 三木孝浩監督)、『来る』(2018年中島哲也監督)、『最高の人生の見つけ方』(2019年・犬童一心監督)、がある。 その他、Netflix作品「First Love 初恋」(2022年・寒竹ゆり監督)、「忍びの家 House of Ninjas」(2023年・デイヴ・ ボイル監督)にも参加している。

後藤一郎氏/諏訪圏フィルムコミッション推薦

【受賞理由】
3か月の長期ロケで、大掛かりな撮影も多かった中、期間中クレーム・苦情が一度もなく、事前の監督やスタッフとの根回し、地元住民への根回しや配慮が完璧だったこと。FCの業務範囲や地域の支援範囲をしっかり把握し、撮影側×地元 住民×FCそれぞれの不安点や要望への対応が素晴らしかったこと。ロケハンの能力に加え、地元住民の協力体制を築く能力に長けていて、地元の方とのトラブルが絶対ないと、監督の厚い信頼を得ていることなど、高評価を得た。 

【受賞コメント】
受賞に関しましては、私個人ではなく、共に苦労した制作部スタッフ、撮影にご協力いただいた地域の方々、そして何より撮影に協力してくださり、作品に貢献してくださったフィルムコミッションの皆さま全体の受賞と考えております。撮 影場所に関わる地域の皆さまへより丁寧に接すると共に、撮影場所に関わる皆さまが撮影を楽しんでいただき、また作品 を楽しみにしていただけるような現場を目指すべく、今後も活動できたらと考えております。

【受賞者プロフィール】
大学卒業後の2008年に制作プロダクション株式会社ウィルコへ入社。映画制作の現場に携わる。現場経験を重ねた後、 2010年からフリーランスの制作部として活動を開始。 主に制作担当として関わった作品は『万引き家族』(2018年・是枝裕和監督)、『サマーフィルムに乗って』(2021 年・松本壮史監督)、『怪物』(2023年・是枝裕和監督)がある。その他、海外作品の日本国内での撮影において、米 映画『G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ』(2021年・ロベルト・シュヴェンケ 監督)等では、ロケーションマネージャーとしても活躍している。 

〈総評〉
特定非営利活動法人ジャパン・フィルムコミッション理事長 泉谷昇が日本にFCが設立し始めた2001年頃は、ロケ撮影を誘致・支援しただけで成果として評価された時代だったが、25年近く経った現在では、FCが誘致や支援に加え、作品の制作に大きく影響するネタやロケ地の提案、更に支援作品のPRや活用に関わるなど、積極的にプロデュースに携わる時代になった。 滋賀LOにおいては、これまでの経験から企画に係る提案を行い、誘致・支援を成功させ、更にPRや経済効果を生み出し、作品をとおした地域愛の醸成へと好循環へ繋げている。また、浜松FC、いばらきFC、諏訪圏 FCでは、各FCが独自でPR活動をしつつ、3地域が連携して合同企画を成功させるなど、行政区域を超えた 取り組みを行ったが、これは25年前では見受けられなかった好事例である。長崎県FCの150か所を超えるロ ケ地の提案や強力な支援体制、広島FCの地域を巻き込んだPRの企画力と展開、神戸FOの“負”動産をFC活動 で新たな魅力資源に転換した例など、FC業務に囚われない企画力と取り組みを、地域の新たな価値や成果に繋げていることが、日本のFCの素晴らしい発展であり、今後のさらなる可能性を開くものと確信している。 また、FCや地域への理解力や調整力によって現場全体にも影響を与える重要なポジションの制作部スタッフを、JFCアウォード10周年を機に「優秀制作部賞」として、表彰できたことは、今後のFCと制作者のつながりを、より強固なものにするであろうと期待しつつ、今回の総評とする。 

<長崎県、佐世保市にゆかりのある監督からのコメント> 

アウォード授賞式に先立ち行われたシンポジウムにも登壇いただいた松山博昭監督、三木孝浩監督から、本アウォードに対するコメントをいただきました。

松山博昭監督
月9ドラマ「君が心をくれたから」、映画『ミステリと言う勿れ』、ほか FCの日頃の活動や功績をたたえるJFCアウォードは本当に素晴らしい賞だと思います。個人的には、広島と長崎のFCのみなさまにお世話になり、私たちが作品をつくれるのはみなさまのおかげだと、改めて感謝して います。日本全国に、まだまだ知らないすてきな場所やすばらしいロケ地がたくさんあると思います。ぜひ、今後ともみなさまの情報とご協力をいただけるようお願いします。 

三木孝浩監督 映画『坂道のアポロン』(2018)、『くちびるに歌を』(2015)、『アオハライド』(2014)ほか 優秀制作部賞を通して、FCの方々に良い制作部(ロケ隊)を評価していたく機会を得たことは、よりよい撮影現場をつくるためにも非常に意義のあることだと思います。全国のFCが連携することで、『ゴジラ-1.0』 のような世界に誇れるコンテンツをつくることが可能になってきます。制作スタッフとFCのみなさんが、互いに厳しい目をもって、よりより映画づくりを追及していくことで、世界と勝負できるようなクオリティの作品を一緒につくっていきましょう。 

【第10回 JFC アウォード授賞式の概要】

(1)日時 令和 6年6月20日(木)
(2)会場 JAながさき西海 させぼホール 6階大ホール(長崎県佐世保市松浦町2-28) 

(3)選定対象:最優秀賞・優秀賞:令和 5 年度(2023.4~2024.3)公開または放映の「映像作品※1」を支援した「地域 FC 等※2」 
※1:映像作品には映画、ドラマ、CM、音楽プロモーションビデオを含む
※2:地域 FC 等には、フィルムコミッション、ロケ支援団体、地方自治体、協議会等も含む 

(4)選考項目
① 素晴らしいロケーションを発掘した FC
② 大規模撮影やこれまでにない工夫を実現した FC 
③ 支援作品を地域のPRにうまく活用した FC
④ 支援作品を地域のまちづくりにうまく活用した FC 

(5)選考方法
① 各地から自薦・他薦により候補 FC を募集
② 上記選考項目に関して JFC 会員による投票を経て、地域 FC の代表、業界関係団体の代表、および有識者からなる JFC 理事会において選考

【ジャパン・フィルムコミッション(JFC)とは?】
全国の FC やロケ支援団体並びに製作関係団体・個人など約160の会員からなる日本で唯一の映像支援団体のネットワーク組織で、日本の撮影環境の発展と地域振興を目的に、国内外の映画・映像作品の製作支援をはじめ、FC 等の人材育成支 援、映像産業の振興、映像文化の普及、文化観光の振興、地域資源の評価などの資する事業等を行う組織です。 


<本件に関するお問い合わせ先> 

特定非営利活動法人 ジャパン・フィルムコミッション 
担当:木村 
Tel 03-6264-2042
Fax 03-6264-2043
E-mail: kimura@japanfc.org 
Mobile: 080-6234-1798