銀行は日々の暮らしの中で欠かせない存在です。もし、自分や家族が預けたお金が、事件に遭ったら?
この記事では、滋賀に本店を構える「滋賀銀行」の支店で起こった横領事件について紹介します。9億円という巨額が被害に遭った、昭和の事件をご存じでしょうか。
概要
「滋賀銀行9億円横領事件」は、京都府にある滋賀銀行 [山科支店] で発生した横領事件です。被害総額は9億円近く(当時の物価を現在の貨幣価値に換算すると30億円ほど)にのぼり、【日本最大級の横領】として知られています。
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詳細・経緯
主犯は当時京都市在住だった42歳の女性銀行員。仕事での評価は高く、模範銀行員として行内や顧客から信頼されていた人物でした。
昭和41年(1966年)の11月~昭和48年(1973年)の2月の約6年半にわたって犯行が繰り返され、着服後の金はほぼ全て、共犯である愛人の男に貢がれていました。
愛人の男は交際途中で黙って別の女性と婚姻しており、男に騙され最終的に捨てられた形になった主犯には同情の声も集まりました。主犯は服役中に真面目に刑に向き合い、少しずつ返済も行われました。
被害総額
- 8億9420万3千667円(※ 解釈によって諸説あり)
経緯
- 1964年4月……後に愛人となる男に出会う
- 1965年9月……山科支店に転勤
- 1966年5月頃……男と再会。交際に発展し、しだいに金を貢ぐようになった
- 1966年11月~1973年2月……愛人の男に横領をそそのかされて着服に及ぶ
- 1972年10月……事務決裁者となる
- 1973年2月……[東山支店]への転勤辞令を受け、後任の銀行員によって不正が確認された。逃亡したことで指名手配される
- 銀行の管理体制も問題視され、関係者が退任や減給、降格処分となった
- 1973年10月……潜伏先で身柄を確保され、逮捕に至った
裁判
- 1973年12月22日……初公判
- 1976年6月29日……主犯に8年の懲役、共犯の男に10年の実刑が言い渡された
関連資料など
書籍の他、ドラマや映画の題材にもなっています。
ノンフィクション
- 和久峻三『裁かれた銀行 : 滋賀銀行九億円横領事件』1978.6,講談社
- 参考:国立国会図書館のページ
小説
- 『苦い札束』1992.4,集英社文庫
(内、清水一行「九億円詐欺事件」が該当)- 参考:国立国会図書館のページ
など
まとめ
この記事では、昭和に発生した滋賀銀行支店での横領事件についてお伝えしました。
- 被害総額の巨額さから日本全国に知られた
- 主犯となった女性銀行員が、共犯の男に貢いでいた
- 主犯・共犯どちらも逮捕され、実刑判決を受けた