皆さまは「妖怪」、好きですか? 妖怪といえば怖~いお化けから、どこか憎めない愛嬌のあるキャラクター風のものまで、さまざまな種類がいますね。

滋賀太郎
滋賀太郎

「百鬼夜行」なんてのもありますが、すごい種類ですよね……!

日本全国の妖怪を集めると100種類では追いつかないほどですが、滋賀県にもいわゆる「ご当地」の妖怪がいます。存在や由来を知れば、あなたが普段目にしている風景がガラッと違って見えるかもしれませんよ!

ぜひ最後までご覧くださいね。

滋賀の妖怪31選【サクッと早見表】

滋賀で語られる「妖怪・お化け」などを、

  • 伝説に登場するもの(4つ)
  • 怪談話で語られるもの(27つ)

の2つに分けて紹介します。

滋賀太郎
滋賀太郎

合計、約30種類ですか!

まずは早見表からどうぞ! その後、それぞれの由来などを1つずつ紹介しますね!

近江びわ子
近江びわ子

残念ながら終わってしまったサービスですが、「自転車で滋賀を巡りながら妖怪をスマホに収める」という催しもありました。

参考:めぐりんこ|湖東 妖怪封印ARラリー

早見表:伝説に登場するもの

名前ゆかりの地
大百足(おおむかで)三上山
先食烏(せんじきがらす)多賀大社
大蛇(だいじゃ)大瀧神社
白猪(しろい)伊吹山

早見表:昔からの怪談話で語られるもの

名前ゆかりの地
河太郎・ミズシ彦根城など
おたまさん長浜市、米原市、彦根市など
二丈坊(ニジョボン)多賀町~永源寺あたり
仙人姿の天狗(てんぐ)西明寺
璞蔵主(はくぞうす)古刹勝楽寺
油坊主(あぶらぼうず)金剛輪寺
鉄鼠(てっそ)三井寺
山姥(やまんば)愛荘町
平将門の首宇曽川
油赤子(あぶらあかご)大津市
砂ほり婆草津市、栗東市、東近江市、八日市市
目玉しゃぶり瀬田の唐橋
茄子婆比叡山延暦寺
幽霊の鉦(かね)、目一つ坊比叡山延暦寺
船坂の靄船(もやふね)比叡山延暦寺
美人の水ごり比叡山延暦寺
一文字狸比叡山延暦寺
掌に乗った大蛇比叡山延暦寺
六道おどり比叡山延暦寺
片輪車(かたわぐるま)甲賀市
百足女房(むかで-にょうぼう)甲賀市
地黄煎火(じおうせんび)水口
赤入道武佐
伊吹山の水神伊吹山
女ノ執心鼠ト変化シテ夫ヲ殺ス事堅田
死シタルモノ犬ニ生ルル事守山
ダイダラボッチ琵琶湖・三上山

滋賀の妖怪|伝説編

※ 大百足の伝説がある「三上山」

古事記や日本書紀などで語られているもの・平安時代の伝説などを4選紹介します。

1:大百足(おおむかで)|三上山

大津市の三上山に居たとされる百足(むかで)の怪物です。

藤原秀郷という名の武将がおり、龍神一族の娘から「三上山の大百足を倒して欲しい」と請われました。秀郷は八幡神に祈って矢を放ち、大百足を討ちました。

近江びわ子
近江びわ子

大百足退治の礼に「巻縄」「俵」「釣鐘」をもらい、以後、秀郷は俵にちなんで俵藤太(たわらの-とうた)と呼ばれるようになったということです。

2:先食烏(せんじきがらす)|多賀大社

多賀大社の神の使いです。

古くから行われる神事では「先食台」という台に米を供え、この神の使いである烏が米を食べるというものがあります。ついばまなければ「穢れている」として造り直したのだとか。

3:大蛇(だいじゃ)|大瀧神社

犬上川上流には「滝の宮」と知られた場所があり、そこにある「大蛇の淵」に出たという大きな蛇(へび)です。

イナヨリワケノミコトが狩りの最中に昼寝をしていると、愛犬が激しく吠え立て、ミコトはその愛犬の首を切ってしまいました。すると愛犬の首はそのまま大蛇に襲い掛かり、大蛇を仕留めたということです。

近江びわ子
近江びわ子

愛犬・小白丸の首が流れ着いたとされる場所には、「犬上神社(犬頭明神)」があります。

4:白猪(しろい)|伊吹山

ヤマトタケルノミコトが伊吹山の神を討とうと出かけた時、山中で出会った「牛のような大きさの猪」です。

その正体は山の神でした。ミコトは「神の使いだ」と誤って判断したことから怒りを受け、病におちいりました。

滋賀太郎
滋賀太郎

この病のせいで衰弱し、ヤマトタケルノミコトは大和に帰りつくことも無く、三重県の武蔵野で命が尽きたとされています。

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滋賀の妖怪|お化け編

※ 鉄鼠の由来がある「三井寺」

ここからは、ちょっと怖い話も交えて紹介していきます!

5:河太郎・ミズシ|彦根城など

いわゆる「河童(かっぱ)」です。彦根のあたりでは「ガッタ」とも呼ばれます。

6:おたまさん|長浜市、米原市、彦根市など

ケサランパサランとも呼ばれる妖怪です。白い毛玉のような姿でふわふわと漂っているといいます。

捕まえて箱や瓶などに入れ、おしろいを餌に与えてこれを飼うと、幸運が訪れるのだとか。

近江びわ子
近江びわ子

玉のような姿だから「おたまさん」なのでしょうか……?

7:二丈坊(ニジョボン)|多賀町~永源寺あたり

にじょうぼう、とも。約6メートル(2丈)ほどの背丈がある、僧侶姿の妖怪です。

多賀町にある敏満寺に出現する二丈坊は狐が化けた姿で、「足元を何かで払うと消える」と対抗策まで継がれているのだとか。

8:仙人姿の天狗(てんぐ)|西明寺

甲良町の池寺(西明寺)に出たという天狗で、三体いるそうです。

本堂で読経し修行していると扉が少し開き、そこから仙人姿の天狗が覗いていた……。仙人姿をした天狗は「邪魔はしないから修行を続けよ」と声を掛けたのだそうです。

9:璞蔵主(はくぞうす)|古刹勝楽寺

白い狐が化けた僧侶です。

甲良町の勝楽寺には「璞蔵主」という名の僧侶が居て、その弟・金左衛門は狩りでよく動物を殺生していました。璞蔵主が留守の時に白狐が璞蔵主に化け、金左衛門に「バチが当たるぞ」と言ったのです。

滋賀太郎
滋賀太郎

正体を見破った金左衛門は白狐を殺してしまいますが、兄の璞蔵主に諭されて改心し、この白狐を弔う「狐塚」を造ったといわれています。

10:油坊主(あぶらぼうず)|金剛輪寺

油坊(あぶらぼう)とも。金剛輪寺に出る影のお化けです。

その昔若い坊主が修行に耐え兼ね、おつとめに使う大事な油を盗んで売り、町で遊んでしまいました。その直後、その坊主は原因不明の病で亡くなりました。

坊主が亡くなった次の日から、おつとめで上っていた石段に油を持った影が現れ、夜な夜な歩いては「油返そう」と言う、ということです。

11:鉄鼠(てっそ)|三井寺

三井寺の僧・頼豪が鼠(ねずみ)の顔をした悪霊となり、当時対立していた比叡山延暦寺を八万四千匹のねずみが襲った、という平安時代の話です。この悪霊が「鉄鼠」です。

僧の名前から「頼豪ねずみ」とも呼ばれています

イベント情報

現在、大津市の三井寺では「妖怪ナイト」というイベントが開かれ、多くの人で怪談話を楽しむ取り組みが行われています!

▼ 妖怪ナイトの特設サイトはこちら
参考:三井寺|妖怪ナイト2024

近江びわ子
近江びわ子

ちなみに延暦寺のふもとには、鉄鼠に対抗して「猫の宮」が……。

12:山姥(やまんば)|愛荘町

愛荘町に住み着いていたという山姥で、村に下りては子供をさらって、村人を苦しめていたといいます。宇曽川の上流にある「山比古湧水」の近くの遊歩道では、今も、岩にこの山姥の足跡が残っているそうです。

13:平将門の首|宇曽川

平安中期の武将「平将門」が討たれた後、これを討った藤原秀郷が中山道を帰っている時に生首が追いかけてきました。宇曽川のあたりで勝負を挑まれ、秀郷は和歌の勝負を持ち掛けます。

首が葬られた山塚古墳は「将門塚」と呼ばれ、首はその後、宇曽川が氾濫(はんらん)時に塚を抜け出したとも……。再び力尽きたところを里の人が拾って、平流山に葬ったと伝わっています。

14:油赤子(あぶらあかご)|大津市

大津辻に出現し地蔵の常夜灯を盗んでいた泥棒が、死んだ後にお化けになった妖怪。火の玉の姿をしているそうです。

そのまま屋内に侵入しては、油を舐めて出て行くといわれています。

15:砂ほり婆|草津市、栗東市、東近江市、八日市市

道行く人に砂を放る(投げかける)妖怪です。「砂を放る(ほうる)」ことから「砂ほり」と呼ばれるのでしょうか……?

近江びわ子
近江びわ子

おそらく類似の妖怪と思いますが、全国の有名どころでは「砂かけ婆」が居ますね。

16:目玉しゃぶり|瀬田の唐橋

瀬田の唐橋に出るといわれる、美女姿の妖怪です。橋を通ろうとした者に声を掛け、「橋のたもとで待つ友人に届けてほしい」と小箱を渡すのだとか。

渡された小箱を途中で開けてはなりません。開けると死んでしまい、目玉を繰り抜かれてしまうのだそうです……。

17~23 延暦寺七不思議

京都との境目にある比叡山延暦寺には、「七不思議」が伝わっています。

17:茄子婆|比叡山延暦寺

姿が60~70代ほどの老女で、顔の色が茄子色(紫色)をしています。織田信長が比叡山を焼き打ちした際、「夜に鐘を鳴らして信長の襲撃を知らせた」という話が残っています。

18:幽霊の鉦(かね)、目一つ坊|比叡山延暦寺

「青坊主」とも呼ばれます。生前は「慈忍和尚」という名だった僧で、死んだ後に単眼の妖怪になりました。弟子が怠けていると鉦(かね)をカンカンと鳴らして、一つ目で睨むのだと言います。

19:船坂の靄船(もやふね)|比叡山延暦寺

靄(もや)が深く立ち上った時に、死者たちが舟に乗って坂を登って来るという。お盆の怪異です。

20:美人の水ごり|比叡山延暦寺

院に女性の位牌(いはい)があり、毎夜カタカタと動き出すので小僧が後をつけて行き先を確かめたところ、水に入っていった。そこでは美人の女性が水ごり(冷水を浴びる祈りの方法の1つ)をしていた。

顔を見ると、位牌の女性の、生前の顔に似ていたのだという。

21:一文字狸|比叡山延暦寺

彫刻の上手い層がタヌキの彫刻を作ったところ、夜にその彫刻が化けて出た。「千体作ってはどうだ」と言って消えたといいます。

そこから僧は千日に渡って1日1体のタヌキを作りながら、千日回峯行という修行を終えました。そして、やがて立派な高僧になりました。

そのタヌキの彫刻はいずれも「一文字」に彫られた眉をしており、そこから「一文字タヌキ」と呼ばれたそうです。

22:掌に乗った大蛇|比叡山延暦寺

慈恵大師が封じたという大蛇です。

慈恵大師が「神通力を持っているのなら見せて欲しい」といったところ、大蛇はお堂を一巻きにするほど大きくなりました。続いて「では、私の手のひらに入ることはできるか」と言うと、小さくなって手の中に納まるサイズになりました。

近江びわ子
近江びわ子

小さくなった大蛇は池に封じられ、「蛇が池」の由来になったのだそうです。

23:六道おどり|比叡山延暦寺

淀君(よどぎみ)が建立したお堂があり、ここで法要を盛大に催すと、六道をさまよう死者たちが浮かれて踊り始めたそうです。

六道とは

仏教の教義で、死後に転生する6つの冥界のこと。

24:片輪車(かたわぐるま)|甲賀市

美女が乗った、片輪の車の姿をしています。夜更けに車を引く音を立て、出会ったり覗いたりした人には祟りをもたらすそう。

滋賀では寛文の頃(1661~1673)に出現したとされています。

片輪車を覗き見た女が「お前の子を見よ」と告げられ、驚いて我が子を見に行くと姿を消していました。悲しんだ女が懺悔の歌を詠んで戸に貼り付けたところ、この歌を見た片輪車は「子を返そう」と言い、その後現れなくなったそうです。

近江びわ子
近江びわ子

片輪車は全国にも類話があり、「子どもを返してもらったパターン」「すでに子が殺されてしまっていたパターン」などに分かれるようです。

25:百足女房(むかで-にょうぼう)|甲賀市

甲賀に伝わる昔話です。

ある人が「百足を嫁さんに欲しい」と思い、百足を嫁に迎えました。しかし、足がたくさんあるために草履をたくさん作らねばならず、結局、離縁してしまったという。

26:地黄煎火(じおうせんび)|水口

膝頭松という大木にまつわる話です。

松のあたりで「地黄煎」という飴を売っていた者がいて、強盗に殺されてしまいました。地黄煎売りは死んだ後も松のもとに留まり、雨が降る夜には火の玉が飛ぶように……。

また、絵では「巨大な化物姿の亡霊」として描かれることもあるそうです。

27:赤入道|武佐

武佐にある寺に出ると噂されていた妖怪です。噂を聞いた男が「そんなもの居ない」と豪語し、寺で夜を過ごしていました。すると「見せてやろう」と声がして、当たっていた炬燵(こたつ)の中から赤入道が出てきたのだという話です。

28:伊吹山の水神|伊吹山

伊吹山の池に居たという、悪神。守山宿の医者・玄仲(げんちゅう)が池の主に狙われるも、昼のうちに助けた猿からもらった箱で事なきをえます。

『金玉ねぢぶくさ』という浮世草子に記された話です。

29:女ノ執心鼠ト変化シテ夫ヲ殺ス事|堅田

『善悪因果集』という説話集に記された話です。

ある女が死んだ後、彼女との約束を破った夫が再婚をしたところ、大きな鼠(ねずみ)が現れて障るように。破った約束に思い至った夫は後妻と離縁しますが、それでも鼠の害はやみません。

どこにでもついてくるので夫は弱り、最後には亡くなってしまう……という話。

30:死シタルモノ犬ニ生ルル事|守山

江州守山のあたりに住んでいた甚六という男が死後、犬の姿になって家に帰ってきたという、『善悪報ばなし』という草子に載った話。

その犬は人のような声でしゃべり、「愚痴の報いによって、今こうして畜生の身を受けたのだ」などと言いました。驚いた家人が犬を世話していると、二年ほどして犬は姿を消したといいます。

31:ダイダラボッチ

デイダラボッチとも。巨人の姿をしたダイダラボッチが居て、土を掘った跡が琵琶湖になり、掘り出された土は山となって近江富士(三上山)になった……という話です。

近江びわ子
近江びわ子

デイダラボッチというと……アニメ映画「もののけ姫」で有名な、あの?

そうです! 全国の他の場所でも伝説がたくさんあります。琵琶湖を掘るほどの巨人なのですから、そうとう大きそうですね!

滋賀太郎
滋賀太郎

まとめ

この記事では、滋賀県に由来やゆかりのある、妖怪・お化けを紹介してきました。話のネタとして、長く続く歴史の深さを想う機会として、妖怪にスポットを当ててみました。

興味のある妖怪は居ましたでしょうか?

「三上山の大百足」や「ダイダラボッチ」など、琵琶湖や山を見れば、そこにも妖怪や伝説の気配があるのですね。また、今に残るお寺や地名にも妖怪が結びついているのがわかりました。実際に現地に足を運べば、「ここに居たのかもしれない……」とワクワク(ゾクゾク?)しちゃいそうですね!

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。