2018年、滋賀県守山市の河川敷にて、バラバラにされた遺体が発見されました。身元は遺体発見場所の近くに住む女性で、一緒に暮らしていた当時31歳の娘が逮捕され、懲役10年が確定しています。

なぜ娘は母親殺害に踏み切ったのか。事件について迫ります。

事件の概要

被害者は幼少期から娘に対して医師になることを強要していました。9年もの浪人生活の末、娘が医師になることを諦めた被害者は、娘に対して助産師になることを強く求めます。

しかし大学2年に行われた助産師選抜試験に落ちたことに激怒した被害者は、卒業後は別の助産師学校へ入学するように指示します。娘が大学4年生の頃、手術室看護師になりたい娘と被害者の間で争議となったのち、事件が発生しました。

時系列

高校3年~大学入学

  • 自宅から通学できる国公立大学の医学部医学科への進学を求めた被害者は、娘を自らの監視下におくために携帯電話を取り上げました。
  • 被害者の反対を押し切って自宅から離れた大学を受験するものの、連れ戻されます。
  • 被害者が指定した大学を受験し不合格となったが、親族へは受かったとうそをつかされます。
  • 看護学科への進学を決意して就職内定をもらうものの、被害者に反対されたことでかないませんでした。
  • 9年に及ぶ監視と浪人生活の末、医師の道を諦めた被害者が娘を助産師にさせるために、看護学科へ進学させます。

大学2年

  • 助産師選抜試験に落ちたため、卒業後は助産師学校へ入学するよう強要されます。

大学4年

  • 手術室看護師になる夢を持ち看護職員に採用内定となるが、被害者に反対されます。
  • 「助産師学校に不合格となったとしても、看護職員にはならずに再受験する」という内容を記載した始末書を作成させられます。
  • 被害者に隠れてスマートフォンを所持していた娘を自宅の庭で土下座させて、その様子を撮影しました。

事件発生から逮捕に至るまで

時系列

  • 2018年1月20日:娘により被害者が殺害されました。
  • 2018年3月10日:解体・遺棄された遺体が約2カ月後に発見され、事件が公にされます。
  • 2018年5月17日:警察の聞き込み調査により、事件直後から被害者の姿が見えなくなっていることを突き止め、遺体のDNA鑑定結果から身元が判明します。
  • 2018年6月5日:死体遺棄容疑で娘が逮捕されました。

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裁判

第一審

第一審において、弁護側は死体損壊・遺棄について認めたものの、殺害については否認しています。
不合理的な弁解による殺害の否認に反省が見られないが同情の余地があるとして、検察側の求刑20年に対し懲役15年の判決がくだされました。

弁護側は判決を不服として控訴します。

控訴審

控訴審において、娘は被害者の殺害理由や方法を示した陳述書を提出し、自らの犯行を認めます。

別居していた父親が、娘の身柄を引き取って支援することを述べたこと、自供したことで反省の念が深まっていることが評価され、一審判決の懲役15年は重い量刑判断だと破棄されたのち、懲役10年が確定しました。

服役中

事件の取材班(Mr.サンデー)に対する手紙で、娘は以下のように記しています。

弁護士さんに教えてもらって初めて「私は虐待を受けていたんだ。私が置かれていた状況は、助けを求めてよかったのだ」と気付きました。

まとめ

滋賀で発生した母親殺害について、ご紹介しました。

公判を取材し続けた記者によって紡がれた『母という呪縛 娘という牢獄』(齊藤彩,2022.12月,講談社)という本が発売されていますので、もっと詳しく知りたいという人は読んでみてください。